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 > 技術資料 > 掲載論文湿式外断熱工法のメリットと設計・施工方法
09/08/23 更新
『建築知識』 平成16年5月号掲載

 

関口高正

最近、湿式外断熱工法の普及が進んでいる。湿式外断熱工法は、第二次世界大戦後のドイツで、戦争で損害を受けた建物の修繕、または急速に新しい建物を建設していくために、官民一体となって開発されたことが始まりである。通気層を設けずにRC躯体に密着させて断熱を実現させるシステムである。
メーカによって多少の差異はあるが、主な特徴は以下のとおりである。

  1. ビーズ法ポリスチレン(以下、EPS)を接着樹脂モルタルで取り付ける。断熱材としてEPSの替わりにロックウールを使用するケースもある
  2. 使用する材料には耐久性などのほか、密着工法であるため、透湿性も求められる
  3. 湿式工法業者の施工は下地ベースコートから各社専用の仕上げ材までとなり、仕上げには各社バリエーションを用意している

開発が行なわれたドイツでは湿式外断熱工法の方が通気層のある外断熱工法より安く施工できることから、開発当初は住宅などの比較的小規模建築に適用されていた。その後、1960年代の後半より大規模建築・商業建築にも適用されるようになる。特に、外壁市場の8割以上を占める改修では、軽量性や施工性の点からほとんどが湿式外断熱工法である。以下に、本工法のメリットを挙げる。

  1. 軽量・柔軟なEPS断熱材が建物駆体の外側にあり外皮部は透湿・柔軟な薄い樹脂モルタルとガラス繊維メッシュそして仕上げの合成樹脂プラスターで覆われ、外気温度や日射の変動による建物躯体の熱収縮が少なくなる
  2. 駆体から屋外にスムーズに水蒸気が抜け、外断熱部材外皮部で内部の結露からくる凍結融解による部材劣化がない

以上のようなメリットをもつ湿式外断熱工法であるが、国内では発泡系の断熱を使用した湿式外断熱工法については、確認申請時に下記の2つの防耐火性能が重視される。

  1. 下地防耐火壁がもつ非損傷性・遮炎性・遮熱性等に悪影響を与えない防耐火性能
  2. 多層階建築物で、上階への延焼防止に対する防火性能

改正後の建築基準法では上記(1)を性能評価試験などで証明することが求められる場合があるが、(2)に関してはまだ明確な基準は設けられていない。すなわち(1)がクリアされれば、湿式外断熱工法の耐火外壁への適用は建築基準法上ではOKであるが、確認申請で必要となる消防同意では、(2)に関する性能が問題視される場合がある。

ここで、米国でのシェアが最も高い湿式外断熱工法「ドライビットアウサレーション(以下、アウサレーション)」(サンクビット*1)を紹介する(写真1)。国内でも、法改正の内容が明らかになった2002年ごろより、アウサレーションによるRC建築の新築・改修の事例が増加している。


写真1.アウサレーションの事例、米国・コネチカット州のコーストガードハウス。
曲面へも対応していることがわかる。

 

この工法はEPS(ドライビット社認定仕様品)を断熱材に使い、現場施工で仕上げる工法である。断熱材を透湿接着モルタルでRC躯体などへ接着し、左官や塗装技能者の鏝作業により、ガラス繊維補強メッシュと透湿接着モルタルとをからめながら、断熱材表面を薄く仕上げる。
  最後の仕上げ法には鏝とスプレー(ローラー)2種類の施工法がある。透湿性や柔軟性・長期耐久性など工法部材設計上の理由で、仕上げは必ずドライビット社専用フィニッシュコートに限定される。この素材はアクリル系樹脂がベースの塗材であり、EPSとベースコートを組み合わせた柔軟なシステムに塗り付けやすく、水蒸気を通すように開発された、特殊なものである。
コストは、地域によって多少の差がある。標準的な、クォーズプッツ仕上げで1万6千700円〜2万円程度である。(写真2・3)。

写真2
  鏝仕上げのフィニッシュコート「クォーツプッツ」
写真3
  鏝仕上げのフィニッシュコート「サンドブラスト」 砂模様

表.ドライビットアウサレーション基本性能・仕様一覧
使用材料 断熱材:EPS、接着樹脂モルタル:ジェネシスと普通ポルトラルセメント、ベースコート:接着樹脂モルタルとガラス繊維メッシュ、トップコート:天然石英骨材入りアクリルベース塗材
断熱性能 約16kg/m3、熱伝導率:0.038w/mk
断熱材寸法 600x1200x20〜100mm
施工方法 後張り
耐クラック性への工夫 ・ ベースコートにメッシュを埋め込む(メッシュは強度の高さが5種類揃う)
・ コーナーや開口部廻りに補強メッシュを入れる。
駆体への不陸調整への対応 ・ サンダー鏝でEPSを平らにする
・ 接着樹脂モルタル厚さで調整
透湿構造/透湿抵抗
単位:m2sPa/ng
・RC(@150)    0.057
・EPS(@100)  0・0171
・ ベースコート(@2.5) 0.0010
・ 仕上げ材(@1.0) 0.0008
目地の有無 23mごとに伸縮目地を入れ
仕上げ材のバリエーション ・ アクリルベースの塗材に石英骨材を混ぜたものを鏝仕上げ
・ アクリルベースの塗材に自然骨材を入れ吹き付けで大理石風仕上げ
テクスチャーのバリエーション ・ レンガ調仕上
・ タイル調仕上
・ 吹付けタイル調仕上など
標準24色、特注色355色以上
対応構造 RC造、S造、木造
対応する建物高さ 110mまで(31m以上は要工法検討)
その他の特徴 ・ 急速に硬化完了する樹脂モルタルの「ラピドライ」を使用して、夜間氷点下になる前に硬化乾燥が終了でき、寒冷期施工を可能にする。
・ 高層建物や芸術性の高い装飾外観などでは、パネリゼーション、モールディングといった製造工場でのプレハブ工法が適用できる。

アウサレーションのシステム概要と、その品質や性能についてまとめる(表)。

  1. 外装材の基本性能(防水・耐風圧・耐久・耐候・断熱・意匠性等)を確保しながら、水蒸気によるトラブルを排除
  2. 軽量で荷重負荷が少ない(耐震時の外装劣化に有利)(@50mmにて約5Kg/m2)接着樹脂モルタル加えると約8 Kg /m2
  3. EPSは自己消火性と呼ばれる難燃性能をもつ。また、ドライビット樹脂モルタルでの端部メッシュ巻き込みによる全面包み込み(溶融EPS被覆での延焼拡大防止)で上階への延焼に対する防火性能に優れる 多層階外装防火国際評価基準であるマルチストーリー(現ISMA)試験に合格。世界各国の防火規制をパス
  4. デザイン表現力が高い。テクスチュア5種以上、標準24色他特注色355色以上。凹凸や曲面仕上げも可能
  5. 熱橋がなく厚い断熱施工ができ、省エネ効果が高い(アンカーや金具が不要)

以上のような特徴のほか、適切な施工をしようとしたときに、選択できる商品・工法が多いことも挙げられる。たとえば、急速に硬化完了する樹脂モルタルの「ラピドライ」を用意し、夜間、気温が氷点下になる前に硬化乾燥が終了できる。

RC造を基本にアウサレーションを利用して設計する場合の注意点を解説する。



  基本的に垂直外壁および水平下向き(バルコニーの上げ裏など)までで、水平上向きの屋根や庇上面には施工不可である(図1)。また、パラペット頂部などで、どうしてもアウサレーションで対応しなければいけない水平上向き部に関しては、システム保護の目的で、必ず水勾配(1/2以上)を設け、なおかつ300mm以内の長さとする。基本的に、金属製笠木・水切りを推奨している。

(図1)ドライビットアウサレーション適用部位とその注意事項
クリックすると大きく表示されます。


  基礎断熱など土に触れるような設計をしたい場合、各種基礎断熱工法にて、地盤面より20cmまでは外断熱し、地盤面より20cm以上離れた上部に、アウサレーションの下端部を設ける(図2)。

(図2) 基礎廻りの設計
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その場合、降雨による雨水の跳ね返りなどでシステム表面が汚されないように、システム近辺の地面表面を覆いうこと。また、バックラップ施工(開口部廻りなどEPS端部はメッシュで巻き込むこと。延焼防止につながる。)では、システム下端部の鏝施工のために、15〜20cmの空間を設置するなどの注意が必要。



  基本的に、最小の20mm厚みでも、可能な範囲で極力断熱材を用いた通常仕様で設計する。断熱層がないと、湿式外断熱システムとしての耐久性・耐クラック性・耐汚染性などの基本性能が得られにくくなる。また、下地RC躯体の保護効果が得られない。
  どうしても断熱材が施工できない場合でも、ガラス繊維補強メッシュと樹脂モルタルによるベースコートだけでも、施工しておくことで、多少の効果がある。長期保守コストに大きく影響する内容だけに、なるべく基本形での全面使用が好ましい。



  目地には装飾目地(エクステリアジョイント)と伸縮目地(エクスパンションジョイント、シール目地)の2種がある。装飾目地は、意匠の目的で設けるが、最小でも20mm厚以上、EPSを残しておく必要がある。フィニッシュの施工可能領域毎に装飾目地で区分けを行い、コールドジョイントを防止する。
  伸縮目地は、システムのクラック防止のため、下地にエクスパンション目地があるところや、下地仕様が変わるところ、木造2階建てでのフロアライン、そしてRC建築外壁で、連続の立面において23m以内ごとなどに入れる(図3)。また、その他表面に過剰な伸び応力がかかりそうな部位に入れる。他部材との接合部位にも必ず設ける。

(図3) 伸縮目地の設計



  改修の場合などで、階段室に厚いボードを使用する場合は階段幅の有効をよく確認して断熱材厚みを決定する。また、開口部まわりでは、防水シールや水切りなどの納まりに注意して、施工計画を検討する。基本的に、以下のポイントに注意して納まりを検討する。

  1. 断熱ラインをとぎれないようにする。熱橋は結露の原因になるので、特に開口部廻りで注意する。 (図4)
  2. 下地は、耐水性ある材料であり、かつ、下地側で一時防水が完了している納まりとし、アウサレーションと他部材との防水シールは「二次止水」の考え方とする。
  3. ベースコート施工では、鏝を使用するので、その作業が可能な取り合いで、納まりを検討する。
  4. 下地が伸縮目地などないRCの場合、システムの伸縮目地は23m四方まで不要となるが、フィニッシュ施工では、一度に施工できる範囲がそれより少なくなるので、装飾目地などで、施工エリアを区切っておく。
  5. 屋根や庇に接合する外壁部では、必要な水切(キックアウト)にて、屋根の雨水がシステム背面に入らないように工夫する。

 

(図4) 新築時のサッシ納まり図

アウサレーションの施工手順を (図5)にまとめる。なお、手順ごとにポイントはあるが、特に気を付けたいのは、ボードの不陸は完全になくすことと、メッシュの貼り方である。


(図5) ドライビットアウサレーション施工手順

開口部廻りは必ずメッシュで補強する。さらに、前述でも述べたが、延焼防止のためには、ドライビットボード端部には樹脂モルタルによりメッシュが巻き込まれていることが大切であるので注意されたい。
  さらに、台車などの衝突など、耐衝撃性を特に求められる場合は、より強度の高いパンザー・メッシュを用いるが、これは重ねずに突き付けで貼ること(ドライビットではメッシュを強度別に5種類用意している)。

木造建築物では特に下記の3点に注意して対応する。



  現行製品であるアウサレーション工法で対応する。たとえば、モルタル仕上げ塗装の場合、接着力確保処理の上、施工可能となる。ALC薄板(クリオン社エースボード等)は粉止め(カラープライム等塗布)処理の上対応する。



  火山性ガラス質複層板(ダイライトMS12t)+アウサレーションプラス(‘04年度国内販売開始予定)で対応が可能(個別防火認定工法「PC030BE-0203」)。ただし、次の施工手順による。

  1. ダイライトを木造軸組へ取付、
  2. 内装側へ内装材を取付、
  3. ダイライト目地部・出入隅部へガラス繊維メッシュ(グリッドテープ)貼付
  4. ダイライトビス痕へ下地調整専用樹脂(バックストップNT)塗布
  5. 鏝もしくはローラーで下地全面へ下地調整専用樹脂(バックストップNT)塗布
  6. 下地面乾燥・他部材との一次防水処理後は一般施工手順に沿う

  1. 木造合板下地への一般アウサレーション接着施工は、下地の吸湿による腐朽リスクがあるため、メーカーとして施工推奨していない(加えて、この仕様のままでは、防火認定はとれない)。
  2. 2階建て以上の木造建屋の場合、非木造に対して、地震時の揺れが大きく、いずれのドライビット施工でも、必ず2階以上の階の床ライン近くで伸縮目地を設けなくてはならない
  3. 木造建物でも、他のアウサレーション同様、防水仕様は、下地側の一次シールに対し、ドライビット側で二次シールを行い、防水を2重に行う
  4. 木造建物では、開口部や貫通部が相対的に多くなるが、個々の詳細納まりにおいてバックラップ+二次防水シールをしっかり行い、漏水防止に配慮すること

 
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