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09/08/23 更新

『建材フォーラム』 平成15年10月号掲載

○ 特集○ 湿式で仕上げる外断熱工法

(株)サンクビット 営業・技術統括部長 関口高正

 現在、日本のコンクリート建物は内断熱が主流である。しかし、欧米の断熱先進国では外断熱が常識である。特にデザイン表現力に優れ、改修に適した湿式外断熱工法は、数十年前より欧米の外断熱の主流である。躯体を分厚い断熱材でスッポリと覆う外断熱は、省エネ・耐久性・快適性など従来の内断熱では期待出来ない数多くのメリットを備えている。しかし、これまで国内では、旧建築基準法の制約があり、海外で主流の湿式外断熱工法は国内のコンクリート建築物には、ほとんど適用されなかった。

 ところが、2002年の6月に基準法改定の詳細内容が明らかとなり、仕様規定から性能規定への移行で、欧米で実績の多い湿式外断熱が、国内でも実施可能となった。これまで、鉄とコンクリートとガラス・アルミ等で構成されてきた国内の建築仕様に大きな変化が始まった。発泡系の断熱材を使用した湿式外断熱工法が新築・改修のプロジェクトで可能になったのである。

 世界の湿式外断熱工法と言えば、数十年前より欧米で普及している工法であるが、長い外断熱の歴史の中では厳しい工法の淘汰があった。中でも米国のドライビットシステムズ社のシステム製品「アウサレーション®」は過去35年間で46カ国に対し2.3億m²の実績を誇っている。この2.3億m²の数字イメージは、仮に外壁面積1万m²(旧丸ビル程度)のビルでいうと世界中に2万3千棟建築されてきたこととなる。同工法を実質上の「世界標準工法」と位置づける人が多いのも頷ける。当社では、日本の総代理店として同工法の資材を販売している。

 湿式外断熱についてのその他の話題を以下に紹介する。

  • 地球温暖化防止京都会議…欧州での湿式外断熱改修による20年以上にわたる大きなCO2削減・省エネ達成の実績は、日本の施策へ影響を与えるものと予想される。
  • 環境負荷低減…建築廃材の処理場不足などより、行政ではスクラップ&ビルドで予定していた公営住宅の長期計画を見直している。LCCを考慮した長期修繕計画では、湿式外断熱改修による長寿命建物化に行政の関心も高まっている。
  • 健康住宅…既存RC住宅に住んでいる人の中では、浴室や北側居室の環境改善、「結露・カビ」防止対策より、湿式外断熱改修への関心が強い。
  • 工事共通仕様書改定…昨年7月の国土交通省による同仕様書の改定で、初めて外断熱改修工事が環境対応グリーン工事として追加された。
  • 品確法と性能評価…品確法が、昨年末には改修工事に対しても適用されるようになり、外壁改修の各種工法に対しても、性能評価の比較に関心が集まっている。
  • 新省エネ法…非住宅・2千m²以上の建物に対し、2003年4月1日より施行された。無断熱の70ポイント程度の多くの既存建物を基準の100ポイント以上にするため、従前の補修・塗装改修から湿式外断熱改修に変更する動きが始まった。
  • VOC問題…学校や集合住宅の外壁改修の場合、塗装溶剤の臭いが問題となっており、少しでも臭いの少ない外装仕上げに関心が集まっている。・・・ETC

 このような市場ニーズの高まりにより、法改正後のこの1年で湿式外断熱工法を採用しようとする物件が急増している。新築物件も増加しているが、RCの既存集合住宅・戸建住宅や病院の防露を目的とした外断熱改修事例の増加も目立つようである。

写真1.ドライビット「アウサレーション®」外壁仕様写真
(下地は耐水・耐火性のある外壁であり、必要強度を保持しかつ接着可能であることが求められる。下地と断熱ボードの間の接着樹脂モルタルは写真では見えない。断熱ボードは20−100mmであり、その表面は2−3mm厚みのベースコート(補強ガラス繊維入り接着樹脂モルタル層)で被覆される。ベースコート表面は1ミリ〜数ミリのフィニッシュコートで仕上げられる。)


写真2.フォックスウッド カジノ レッドヤード コネチカット州
Foxwoods Casino  Ledyard, CT
写真3.プラザタワー フォイニクス アリゾナ州
Plaza Tower  P
hoenix, AZ
 
写真4.ウッドフィールドの街並み シャウムブルク イリノイ州
Streets of Woodfield  Schaumburg, IL
 

 同工法は透湿性ビーズ法ポリスチレンボード(EPS)を断熱材に使い、現場施工作業で仕上げる工法である。透湿接着モルタルにて断熱材をRC躯体へ接着する。左官や塗装技能者のコテ作業で、ガラス繊維補強メッシュと透湿接着モルタルとをからめながら、断熱材表面へ薄く仕上げる。最後の仕上げ法にはコテとスプレー(ローラー)の二種類の施工法がある。洗練された施工方式で、外断熱工法の3要素「高断熱・適性透湿・上階への延焼防止」を確保した工法である。現在では、主に北米・中近東・南米・オセアニア・東南アジア・中国など世界46カ国以上に、年間1,400万m²以上の販売実績となっている。生産も米国・カナダ・ポーランド・中国の計7拠点から出荷する国際展開をしている。隣国中国のように本製品の導入を中心に断熱政策を進めている国も多い。

 同工法の特長は、

  1. 高品質の外装を低コストで実現。外装材基本性能(防水・耐風圧・耐久・断熱・意匠性等)を確保しながら、水蒸気によるトラブルを排除。(施工コストは乾式工法の1/2〜1/3・・・社内比較データ)
  2. 軽量で耐震性が良い。(@50mmにて約8Kg/m²(接着樹脂モルタル含む))。
  3. 上階への延焼に対する防火性能に優れている。多層階外装防火国際評価基準である多層階防火試験(現ISMA)に合格。世界各国の防火規制をパス。
  4. デザイン表現力が高い。テクスチャー5種以上、標準355色の組み合わせ。凹凸仕上げも可能。
  5. 熱橋無く省エネ効果が高い。(アンカーや金具が不要。)
  6. 軽量で改装に適している。施工時に騒音・臭いの問題が少なく、入居したままの改装が可能。(ノンホルムアルデヒド製品)
  7. 汚れ防止機能と防カビ機能を有している。メンテナンスに有利。
  8. 耐衝撃性が良い。日常用途で発生する台車等の衝撃に有効などである。

図1.湿式外断熱工法に要求される品質性能

 また図1に同工法がクリアーしている品質性能に関してその概要図を示す。

 単に防耐火性能のみならず、長期にわたって都市インフラの資産価値を維持していくために多くの要求性能があるのがわかる。

 最近の国内での同工法の施工例を新築の例を写真5〜写真8および、改修の例を写真9〜写真12に紹介する。

写真5.石川県営平和町住宅(新築) 写真6.福井駅前マンション(新築)
写真7.石川県野々市町あすなろ県営住宅(新築) 写真8.群馬県高崎市大塚医院(新築)
写真9.中部電力・長野県飯田市 飯風越アパート(改修) 写真10.愛知県一宮市営春明住宅(改修)
写真11.東京都世田谷区三軒茶屋個人邸(改修) 写真12.長野県長野市大豆島団地(改修)

 具体的事例をベースに湿式外断熱による改修の効果を検証してみたい。和歌山県の某町営集合住宅の例である。築後20年以上を経過しているこの住宅は、長期修繕計画に基づき検討された結果、各種メリットの点で最終的に湿式外断熱工法に変更となり、平成14年10月に着工、平成14年12月に竣工された。

図2.外断熱改修工事でのフロー

 一般に、既存RC建築物の外断熱改修工事計画にあたっては、図2のようなフローにて工事仕様が確定される。

図3.ドライビット外断熱改修工法の特徴

 このような背景により、最近同工法の施工技術を習得したいという会社が増加している。例えば国内の各種建設業の業会の中で最も改修比率が高い(昨年度で72%が改修)といわれている(社)日本塗装工業会(会員企業約3.4千社)では、すでに平成14年に「今後の国内改修市場のなかで、この欧米の湿式外断熱工法の普及が加速する」と予測し、本年度より全国ブロックでの組織的な基幹技能者養成講座をスタートした。

 本年8月から実施しているこの研修制度は、3泊4日の合宿で、同工法の施工技術・技能に関する基本カリキュラムを講座・実習各10時間行っている。全講座終了後、考査に合格しレポートを提出すると同工業会の公認「湿式外断熱工法・基幹技能者」の認証が与えられる。同工業会では「工法が優れていても、施工や管理が不十分では、きちんとした仕上がりが達成出来ない。異業種企業が改修市場に参入し、一部ずさんな改修工事が社会問題化していることもあり、本基幹技能者研修制度をスタートした。」とコメントしている。

 厳しい研修日程であるにもかかわらず、すでに全国5ブロック・百名以上が、この研修を終了している。本年末には150名以上の研修完了者が実務に入る予定である。欧米の実績をみても、本工法の特徴として、施工者の技能・技術がそのまま建物の資産価値引き上げに反映されるだけに、研修参加企業の真剣な新規事業への取り組みが感じられる。

 今後、新築物件への湿式外断熱工法の採用が増加するとともに、多くの既存建物に対する長期の維持保全を目的とした大規模外断熱改修が検討されていくものと思われる。 
国内でも今後法改正を受けた同工法への関心の高まりにより、図3に示されるような数多くのメリットを持つ湿式外断熱改修を計画するケースが増加するものと思われる。すでに全国的にそのような事例がスタートしているが、欧州での成功事例を見るまでもなく、外断熱のパッシブ省エネのメリットと住環境改善・建物長寿命化のメリットは、国内の新築市場や改修市場を大きく増加させていくものと予想される。

 特に、潜在市場の大きな改修に関しては、補修・防水・塗装といったこれまでの維持保全目的から、湿式外断熱改修による「建物性能大幅引き上げ→リノベーション」に置き換わることで、文頭に記述した各種の国内課題を解決する有効政策となっていくことを切望している。

 
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