『月刊建材フォーラム』 平成17年1月号掲載


海外で、建物の外壁改修と言えば、湿式外断熱工法が最も普及した工法であろう。この工法は、数十年前より欧米で普及している工法であるが、これまでに厳しい淘汰にさらされた。その中で米国のドライビットシステムズ社のシステム製品アウサレーションは過去36年間で46カ国に対し2.6億m2の実績を誇っている。この2.6億m2の数字イメージは、仮に外壁面積1万m2(旧丸ビル程度)のビルでいうと世界中に2万6千棟建築されてきたこととなる。このアウサレーションを実質上の世界標準工法と位置づける人が多いのも頷ける。

写真1.アウサレーション外壁仕様写真
(下地は耐水・耐火性のある外壁であり、必要強度を保持しかつ接着可能であることが求められる。下地と断熱ボードの間の接着樹脂モルタルは写真では見えない。断熱ボードは20‐100mmであり、その表面は2‐3mm厚みのベースコート(補強ガラス繊維入り接着樹脂モルタル層)で被覆される。ベースコート表面は1ミリ〜数ミリのフィニッシュコートで仕上げられる。)
弊社がドライビット社の国内での総代理店として事業を展開してから、約2年が経過したが、最近の省エネ・外壁改修といった市場ニーズの高まりにより、国内でも基準法改正後のこの2年でアウサレーション湿式外断熱工法を採用しようとする物件が急増している。新築物件も増加しているが、RCの既存集合住宅や戸建住宅のほか病院の防露を目的とした外断熱改修事例の増加も目立つ。これらの物件の増加により、この工法に熟知した設計者や施工者が増え、戸建て改修の物件も徐々にではあるが、増加している。

a.米国での事例
 写真2.ラスベガス ネバダ州戸建て住宅
 写真3.米国 某戸建て住宅
 写真4.米国 某戸建て住宅
現在全米の商業ビルの約3割以上が湿式外断熱工法(EIFS)であるが、アウサレーションは、その業界で圧倒的な実績を持つ。その背景には、厳しい自然環境に対する工法の高耐久性や美観維持の性能に加え、デザイナーの限りない要求に応え続けてきたドライビット社の製品開発力とグループ工事会社の高品質施工への絶え間ない努力がある。
その高度に発達した技術は、戸建て建築にも普及している。米国で、オーナーが戸建て建築に求めるのは、断熱性能や、各種外装性能以上に、オーナーの希望するデザイン表現へのこだわりではなかろうか?
ご紹介した事例以外にも、まさに「アメリカンドリーム」を意識させる、夢のある戸建て建築がこの36年の間に相当数建築されてきた。年間800万m2とも言われる、アウサレーションの販売数量は、商業ビルが中心ではあったが、個性的な戸建て住宅も、数多く建設されてきたことを示す。
初期には数十社もの湿式外断熱工法の製造会社があったが、現在では米国の湿式外断熱業界(EIMA)に加盟している製造会社としてはドライビット社を含めたったの6社になってしまった。簡単そうに見える本工法の事業展開であるが、厳しい自然環境とデザインに対する要求、そして厳しい訴訟社会である建材ビジネスの中で、いかにこの工法を長期的に事業展開していくことが難しいかを物語っている。EIMAのロゴの入ったドライビットによる戸建て住宅の展開は、まさにオーナーの信頼をつないできた歴史かもしれない。(写真2〜4は米国でのアウサレーションの戸建住宅施工物件。)
b.国内の事例
国内でも、法改正が行われたた2002年頃より、アウサレーションによるRC建築の新築・改修の事例が急増している。その傾向は、必然的に戸建てにも及んでいる。
・ RC戸建の例
 写真5.白金台の戸建て住宅(2002年3月竣工・改修後)
 写真6.世田谷区の戸建て(宅改修前)
 写真7.世田谷区の戸建て(2002年3月竣工・改修後)
前述のように36年に及ぶ米国での湿式外断熱工法(EIFS)が普及する段階で、数々の品質問題や市場ニーズの変化に対応していくため、業界EIMAが形成され、信頼の歴史を培った。弊社では、国内でのアウサレーションの施工にあたってはEIMAが規定している研修制度と同様の認定制度に基づき、教育を受けた作業員の管理体制を実施している。外壁改修での瑕疵は、管理者の知識経験不足に起因するケースが多いことより、国内でもこの制度は必須と捉らえている。写真5−7は国内でのアウサレーションのRC戸建住宅施工物件。

戸建てには、熱容量のあるRCやS造もあるが、木造が圧倒的に多い。木造の場合には壁体の熱容量が少なく、熱抵抗的にもあるいは湿気による品質変化においても、コンクリート構造物とは違った性状を持つ。従って、ドライビット工法を木造戸建に適用する為には、米国等諸外国とは異なる国内事情を配慮して、適切な工法を採用しなくてはならない。国内各地域での経年劣化した木造住宅を、実情に応じて改修を行う作業は簡単ではないが、以下では一般情報として、木造住宅改修の実情を生かしつつ、安全にドライビット外断熱仕上改修が出来る基本工法を御紹介する。紙面の関係より、通気層の無いモルタル仕上げや薄物ALCもしくは、RC構造等下地壁のあるケースと、既存外壁を撤去して下地壁から施工する改装のケースに関しての改修を整理した。
戸建住宅の殆どを占める木造の場合、後張りで、外張り断熱を行う場合の考えなければいけない主な注意点は以下のようになる。
- 断熱性能
- 接着剤の性能
- 防湿防水ライン
- 透湿防水ライン
- 屋根と外壁の近接する部位の降雨量の多い場合も含めた防水ライン確保
- 素材の透湿性能
- 層間変形に対する考え方
- 軸方向の乾燥収縮応力の逃がし方
- 逆転結露対策
- 木造軸組構造部材への通気
- 断熱材から外側の設計諸性能(透湿性能、直射日光の熱影響)
- 開口部周辺のディティール(断熱ラインと防水ラインの確保)
(図1〜3に本改修工法に関係するサッシまわりのディティールを示す)

図1 YKK AP「カウンター出窓」
 図2 YKK AP「リフォームウィンドII」
 図3 YKK AP「断熱リフォーム玄関ドア」

木造建築物では特に下記の3点に注意して改修する。
1. 構造外壁に直接モルタル仕上げのような既存下地に防火性能並びに防水性能があり、そのまま接着施工ができる場合
接着力確保処理の上、前出の要領で施工されるアウサレーション工法で対応する。
下地がALC薄板(クリオン社エースボード等)の場合では粉止め(カラープライム等塗布)処理の上対応となる。ALCの取り付け方法に応じたシール目地の配置に留意する。
2.
既存外壁(サイディング等)を撤去したため、下地に防火性能・防水性能がなく、別の下地を構成して対応する必要がある場合
火山性ガラス質複層板(ダイライトMS12t)+アウサレーションプラスで対応する。一旦防火性能のある耐水性下地としてダイライトMS施工を行い、続いて下地面に本工法指定の透湿防水塗膜処理施工を行う。施工手順は以下となる。
- ダイライトMSを木造軸組へ取付
- 内装側へ内装材を取付
- ダイライト目地部・出入隅部へガラス繊維メッシュ(グリッドテープ)貼付
- ダイライトビス痕へ下地調整専用樹脂(バックストップNT)塗布
- こてもしくはローラーで下地全面へ下地調整専用樹脂(バックストップNT)塗布
- 下地面が乾燥し他部材との一次防水処理後は、一般アウサレーションの施工に準じて施工していく。
3. 木造改修施工での注意事項
- 木造合板下地への一般アウサレーション接着施工は、下地の吸湿による腐朽リスクがあるため、メーカーとして施工推奨していない(加えて、この仕様のままでは、防火認定はとれない)。
- 2階建て以上の木造建屋の場合、非木造に対して、地震時の揺れが大きく、いずれのドライビット施工でも、必ず二階以上の階の床ライン近くで、伸縮目地(エクスパンション ジョイント)を設けなくてはならない。
- 木造建物でも、他のアウサレーション同様、防水仕様は、下地側の一時シールに対し、ドライビット側で二次シールを行い、防水を二重に行うこと。
- 木造建物では、開口部や貫通部が相対的に多くなるが、個々の詳細納まりにおいてバックラップ+二次防水シールをしっかり行い、漏水防止に配慮すること。

下地:別途工事 要求防火性能を満たす材料 含水・吸湿変形が少ない材料(上記ダイライトMS12tにて、個別防火認定工法「PC030BE―0203」取得済み)
下地板間防水処理:別途工事 外板下地メーカーの推奨品を外板下地とした構造物に適用する。
この工法の概要は、層の構成を下地側から順に並べると次のようになる。
- 密着型透湿防水塗材の層
- 接着材層兼ドレン層(排水層と逆転結露時の気化層)
- 断熱ボード(ドライビット認定の自己消火性透湿型ビーズ法ポリスチレンボード、16kg/m3以下、熱伝導率0.038W/m・K中心値)*
- ベースコート(アクリル樹脂モルタル 厚み2.7mm以下 耐アルカリ性グラスファイバーメッシュ埋込み 開口部小口処理共)
- 仕上塗材(オールアクリル樹脂系透湿微弾性塗材 防藻性・耐菌性付与型)

工法の特徴は以下の通りである。
アウサレーション及び同プラス共通の特徴。
- 高品質の外装を低コストで実現。
- 軽量で耐震性が良い。
- 上階への延焼に対する防火性能に優れている。
- デザイン表現力が高い。
- 熱橋無く省エネ効果が高い。
- 軽量で騒音振動が少なく、改装に適している。
- 汚れ防止機能と防カビ機能を有している。
- 耐衝撃性が良い。
- 凍害・塩害に強い
アウサレーションプラス特有の特徴
- 止水ラインに取り付け用ネジ等を貫通させる事無く、下地に密着した透湿防水フィルムを構成。
- 止水性の無い下地に対し接着工法によるアウサレーションを適用可能とする。

屋根と外壁が接する部分の雨仕舞は必ず、右図の様に壁の裏に雨水を入れない対策を施す必要が有る。
平坦な壁面から庇を突き出す場合もこれと同様に庇端部の水返しを壁外に突き出させる納まりがなければならない。
又、もっと規模の大きい濡れ縁等の構造部材の貫通を伴う物が壁面から突き出す場合は、外張り断熱仕上システム自体の端部処理を行い、別途水切りによる雨仕舞をする。
 

既存下地を撤去して、ダイライトMSt12下地板を取り付ける場合の施工事例を御紹介する。

写真−8

写真−9
写真−8は外板下地メーカー推奨の板間処理後に、アウサレーション プラスの施工を開始した状況を示す。板間に透湿防水フィルムの補強用グリッドテープを貼り付けている状況である。
写真−9はグリッドテープ上と板留付け穴部を先行して、乾燥後に透湿防水塗材を全面に塗布していく状況を示す。
乾燥後に形成されるフィルムの厚みは0.1mm未満の厚みで透湿防水層の性能を示す。
写真−10〜12は透湿防水塗材が乾燥までの状況であり、ここからは一般のアウサレーションと同じ工程となる。
 写真−10(透湿防水塗材施工完了)
 写真−11(下部より断熱ボード施工開始)
 写真−12(断熱ボード施工完了)
 写真−13(ベースコートを施工し、フィニッシュコート施工して完成)

来年、2月にいよいよ京都議定書が発効される。日本は2008年迄に1990年当時の温暖化ガス排出量の−6%レベル迄、削減する事を公約している。最新の情報では、+14%に達しているというから、この目標は並大抵ではない。
しかし、国策としての省エネルギーも重要であるが、適切な戸建て改修は、個人の生涯資産管理計画上も重要である。来年度からの住宅耐震改修への13%減税のスタートで喚起される戸建て住宅改修は、同時に施工できる断熱改修の喚起にもつながる。この動きは建替に踏み切れない多数派にとって、無関心ではいられない。光熱費が老後の家計に大きく影響することより、戸建て住宅の耐震断熱改修に関心を寄せる人は少なくない。法改正に伴なう湿式外断熱工法の普及により、技術的に或いは意匠的に良質な戸建て住宅の外断熱(外張断熱)改修が広まることを祈りたい。
外断熱情報サイト
- 日本でのドライビット「アウサレーション」製品情報掲載サイト:http://www.cinqvit.com/
- ユーザー交流サイト「ソトダンフォーラム」(http://www.sotodan.com)
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(関口高正・尾崎泰治)
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