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 > 技術資料 > 掲載論文 > 建物の湿式外断熱改修の現状と今後の課題
06/10/26 更新
『積算資料SUPPORT 』11月号掲載


 

 湿式外断熱工法で、RC(鉄筋コンクリート)等の建築物の外壁改修を計画・実施するケースが増加している。実際の改修では、(1) 外断熱改修できる部位、(2) 防水補強+美装仕上の部位、(3)(1)や(2)と同じに見せる美装仕上のみの部位、の組み合わせで、建物外壁を改修している。コスト的には(1):(2):(3)=10:6:2となり、その3つの改修形態別に、目的とすべき性能を下記に挙げる。あくまでも、RC等の下地外壁は、既存技術で最低限の補修施工を行い、下地躯体としての必要な強度・性能が確保されていることが前提条件となる。

(1) 外断熱機能付加:既存の無(内)断熱の部位を、改修で外断熱の建物とすることで、多くの機能が付加する。

  1. 建物が使用する空調エネルギーを少なくできる・・・寒い冬でも暖く、厳しい夏でも涼しい。自然エネルギーを躯体に蓄熱(冷)し、厚い断熱材で効率よく断熱する事で省エネを行い、空調費用を低減できる。
  2. 居室内の生活環境において結露発生を抑制できる・・・カビ・ダニの抑制により、室内空間が健康的となる。
  3. 居室内の室内気温(体感温度)が外気温の変動に左右されにくく、安定し快適になる・・・質量の大きな構造躯体が快適温度域になることで、輻射で感じる体感温度により、居心地が良くなる。
  4. 建て替えのように効果的な外壁デザイン形状の変更ができる・・・地域もしくは所有者のデザインの要求に幅広く対応し、改装の範囲を超えて建物イメージを変更できる。コンバージョンの中核技術となる。
  5. ヒートアイランド効果を低減出来る。・・・夏の日射で蓄熱量の大きな構造躯体を直接過熱しないので、都市部のヒートアイランド減少への抑止効果がある。
  6. 外壁の劣化要因をシャットアウトし、躯体RCの劣化を防止できる・・・熱・雨水・内部からの水蒸気・躯体内外からの応力などによる表面防水層の劣化を抑制し、厳しい自然環境からRC外壁下地を守る。長期的に建物営繕にかかる費用を軽減でき、補修や建て替えにかかる環境負荷を低減できる。
  7. 耐久性・耐候性・耐汚染性に優れた仕上材で、常に美しい外壁を提供できる・・・塗装の劣化メカニズム要因、すなわち下地からのアルカリ・熱膨張収縮・ひび割れなどから仕上げ材を守ることで美装効果や防水性能が改善される。
  8. 地震・台風などの自然災害による外壁表面劣化に強くできる・・・柔軟で軽量な外皮構造とすることで、落下防止や防水層クラック防止など災害時の安全対策となり、復旧対策時の緊急営繕費用を減少することができる。
  9. 低層部外壁への日常衝撃への保護機能が付加できる・・・玄関廻りや道路に面した低層部外壁を耐衝撃仕様で対応することで、日常起こりうる台車衝撃などから、外壁を守ることができる。

(2) 防水補強+美装仕上機能付加:実際の外壁では、予算の都合上全て外断熱とは出来ないため、断熱を省略する部位もでてくる。予防的な下地保護と美装を行うため、下地に先に樹脂モルタルとガラス繊維メッシュの補強保護防水層を設けてから、専用仕上げ材を施工する。今後の劣化防止になる外壁RCの保護機能を付加する。

  1. (1)のように断熱材がないので、熱変化や、表皮部に発生する各種応力の緩和効果は持たせられない。しかし強靱な防水保護層で一旦下地を被覆・保護するので、仕上材へのひび割れ・劣化の防止効果がある。
  2. 下地の部分劣化を保護し、専用仕上材に対してはアルカリなど劣化要因を抑制する。
  3. 劣化したコンクリートの剥落による事故への予防策にできる・・・劣化を抑制しながら、ガラス繊維メッシュ被覆による物理的な剥落予防にもなる。

(3) (1)や(2)と同じに見せる美装機能付加:実際の外壁では、数十年経過しても殆ど劣化が生じておらず、外断熱や保護機能を省略できる部位もある。その場合は専用仕上材のみとなる。この場合でも、透湿型であり高耐久性の専用仕上材によるメリットが得られる。

  1. 下地処理として専用樹脂モルタルをプレ施工したあと仕上施工する場合、下地のテクスチャーを変え、下地からの仕上材への保護効果を持たすことができる。
  2. 直接既存塗膜の上に仕上施工する場合、下地にテクスチャーがある場合は、骨材のない塗装系の専用仕上材となる。テクスチャーを変えずに(1)Aと同じ専用仕上げ材で再塗装が可能になる。下地に骨材入り仕上材を直接鏝施工する場合もある。

(専用仕上材の耐久性や防汚染性等各種性能は、(1)>(2)>(3)となり、事情が許せば極力(1)で対応する事が有利である。)

 外壁改修を(1)外断熱機能付加+(2)外壁防水保護+(3)美装付与の組み合わせによると捉えると、既存建物外壁を欧米方式の湿式外断熱改修で計画することは、従来の外壁改修の概念とは全く異なった計画となることが認識できる。
 最近のエネルギー問題や建物内外の環境に対する問題意識の高まりは、改修技術に対する要求の変化にも現れている。
 建築基準法の改正後国内でも欧米と同じように、環境対応型発泡プラスチック系湿式外断熱工法を耐火建築外壁へ施工することが可能となった。法改正はビル外壁市場においてもグローバリゼーションによるドラスティックな変化をもたらしている。環境配慮型仕上工法への市場要求が急増する中、弊社の販売する米国ドライビット社のアウサレーション(湿式外断熱工法)による新築/改修物件が、増加している。
 

 湿式外断熱工法(EIFS)について、世界的に最も普及した米国ドライビット社のアウサレーション工法の例で、簡単に紹介する。(累積実績約2.6億m2以上)

 1970年代からの米国での建築市場では、建物の高層化そして社会インフラの増大とともに、数々の現実的な問題も浮上してきた。すなわち、土地取得費用、建設コスト、建物運営費用、人件費、エネルギー費用、メンテナンス費用などである。そのような時代要求に応じるように、ドライビット社のアウサレーション工法は「低コスト」「軽量」「容易な建築工法」として、新築のみならず、古くからの建物の改修に積極的に利用されるようになり、現在では最も普及したビル外壁工法となった。(基本工法は1950年代にドイツで開発されていたが、69年にドライビット社が米国に導入した際に、地震やハリケーンそして厳しい寒波や紫外線等といった広大な米国圏の建築要求に応じて、大幅に改良され現在に至っている。)

 同工法は、(1)断熱EPS(発泡ポリスチレンボード)自体と、A断熱材の下地躯体への接着層、B断熱材保護のための樹脂接着モルタル(ガラス繊維補強メッシュ一体構造)、C美装と耐候性保護のための防汚型仕上塗材、の4つの工法部材より構成されている。建築現場で上記4部材を施工・形成していく現場施工が工法の主流であるが、工場でプレハブパネルやプレハブ外壁(窓付き壁パネル)を生産し、乾式で施工する工法もあり、高層化対応や冬季対策・工期短縮等で利用されている。

 70年代は米国でも第一次オイルショックであったが、そのころから米国民は「建物の断熱は内側より外側に行った方がエネルギー効率が良い」事を理解していた。その結果、各種の外断熱工法が事業展開を始めていたが、耐久性や安全性・施工性やデザイン対応など様々な社会的要求に耐えられない外断熱工法やメーカーは市場から退場して行った。同工法は、実際に建てられた建物が自然災害に強く殆ど維持費を必要としなくなったことで、評価された。通常の外壁では必要となる大がかりな再塗装や、目地部の再シールなどの作業も殆ど必要なく、きついアリゾナ州の日射でも、殆ど色褪せが生じないことが確認された。

 また、コスト意識の高い米国の建築管理分野で、アウサレーションで改修された建物の空調エネルギーの削減(省エネ効果)が注目された。同様に、防水性能と断熱保護機能は、下地外壁の補修後のメンテナンス費用を、大きく低下させた。地震の多い地域で問題になる振動による外壁へのクラックと、その後の透水と凍結融解による劣化のメカニズムが、柔軟で断熱性と防水性の高い本システムの採用により、劣化要因の削減に繋がり、躯体構造物の長期利用が可能になった。40万棟以上の本工法による実績は、如何に優れた技術であるかを物語っている。

 80年代にはドライビット社以外にも、類似湿式外断熱工法(EIFS)を積極展開する企業が増加し、結果的に外断熱工法はEIFSと呼ばれる湿式外断熱工法に集約された。 しかし、36年間の生存を掛けた事業展開の中で、現在では同社を含む僅かに5社のメーカーのみが、EIFS工業会メンバー企業として残っている。メーカーの他にも設計事務所や流通企業・施工会社など約200以上の関連企業が集まって全米EIFS業界(EIMA)を運営しており、巨大市場の成長を育成している。 また、アウサレーションの普及は米国のみにとどまらず、南米・欧州・中近東。オセアニア・極東と広がっており、全世界で、アウサレーションは年間約14百万m2の実績となっている。最近のエネルギーの高騰は、この数字をさらに増加させており、お隣中国でも、国家的政策が奇与する形で年間100万m2以上の販売実績で、市場拡大が進んでいる。

 中国政府は、92年頃上記欧米の湿式外断熱の実体を把握し、米国ドライビット社を呼び寄せ、その協力を仰いで、中国の湿式外断熱による省エネインフラ構築の基盤作りを目指した。すなわち、中国政府は同社とお互いに協力することで、同工法による国の建築仕様規定や国家規格そして各種の試験方法や品質検査規格を作り上げた。これらの規格の大半はドライビット社の奉仕的な規格作成協力業務により、中国政府の希望に添う形で制定された。結果的に現在の200万m2/年にせまる大きな新築もしくは改修の国家的省エネ政策の展開に繋がっており、世界のエネルギー問題を考慮すると、意味深い政策であったことが、推定される。

写真1.アウサレーション外壁仕様写真

 工法の概要:下地は台風や地震に耐えられる長期的な強度・耐久・防水・防耐火性を持っている外壁を使用する。下地に求められる要件は、ビーズ法発泡ポリスチレン断熱ボード(ドライビット社指定仕様品であるが、以下EPSと記述する)を接着出来ることである。軽量・柔軟な同工法の被接着面提供という要件なので、RCやALC等多くの既存外壁が水洗等でそのまま下地とすることができる。下地と断熱ボードの間の接着樹脂モルタルは写真では見えていないが、全面接着で取り付けられる。EPSの厚さは一般的に50〜120mmが多いが、設計事情に応じて20〜300mmまでの範囲で対応できる。そのボード表面は約2mm厚の樹脂モルタルとガラス繊維メッシュが一体になった層で覆われ(鏝施工)、ベースコートと呼ばれる保護層を構成する。その表面は専用の仕上げ材により、装飾的に仕上げられる(コテもしくはローラー/スプレー施工)。

 外壁改修対応として捉えた場合、同工法性能のポイントは以下に整理される。

  1. 省エネ・耐久性向上効果:過去2.6億m2の実績が示す事実は、世界各地での厳しい自然環境に対して証明された驚異的な「耐久性=長寿命」「省エネ=ファクター2〜4以上」そして「各種の既存建築への多彩な改修対応力」である。居ながら工法が可能なため、多くの改修実績に繋がった。
  2. 都市環境・デザイン効果:米国のラスベガスやディズニー・国際ホテル企業など、数々の実績が示すファッサードデザイン要求への同工法の対応力は、多くの都市や事業者の事業成功に繋がった。また、ハリケーンに悩むフロリダや地震対策を必要とするカリフォルニアなどの地域では、軽量・柔軟で自然災害に強い同工法のような湿式外断熱工法を取り入れることで、自然災害から都市のインフラを守り住民の安全を確保するよう地域での建築法規を規定している。さらに、外断熱は、ビル外壁の日射加熱を防ぎ、ヒートアイランド現象の抑制に有効である。
  3. 生活環境改善効果:効率的に外断熱建物にすることで居室内の生活環境におけるVOCや結露によるカビ・ダニの汚染をなくすことが可能になる。また、居室内の室内気温(体感温度)が、安定し快適となる。そして吸音効果のある湿式外断熱工法では、集合住宅棟屋間の外壁間反響を少なくし、窓を開けても静かな屋外環境となる。
  4. 施工現場環境メリット:米国では、施工時においてさえも、厳しい環境要求に対応できなければ事業継続が難しい。建物使用継続中での施工でも、振動・騒音が少なく、溶剤臭が漂わないことが、必須条件となる。また、施工作業者や居住者の健康への環境配慮も重要。80年代の米国でのアスベスト訴訟は有名であるが、施工に使用する建材に発ガン性物質など有害物質が含まれていないことは、現在では米国建材事業の必須要件となっている。

 「アウサレーション」の特徴

  1. 取り付けに金具など使用しないため、高い外断熱性能を確保出来る=下地のRC躯体の蓄熱性をうまく利用出来るため、パッシブ効果による高い省エネが可能。断熱材がEPSであるため、数十年に渡り、熱伝導率や主要物性が劣化しにくく、長期的な省エネ性能が得られる。
  2. ID登録技能者により、ガラス繊維メッシュは樹脂モルタルと一体化して端部に位置するEPSを巻き込むように施工される(バックラップ)。万一の火災時にも断熱材の溶融滴下や燃え上がりを防ぎ、高い防火性能を保持(米国法基準クリア)=工法自体が軽量で柔軟なことより、地震や台風に強く、地震のあとの火災リスクに対しても、高い防火性能を発揮し、資産を守る。国内でも建材試験センターのICBO性能評価証明書再認証発行により、各種性能が証明されている。
  3. 日常衝撃には、耐衝撃仕様とすることで対応し、部分的に打ち傷に強い仕様とすることが出来る=補修が少なくなる。
  4. EPSの端部小口を樹脂モルタルとガラス繊維メッシュで包み込むバックラップ処理により端部シールが可能になり、二重防水構造を標準仕様としている=長期的防水性能の確保が可能。
  5. 断熱材には通常より透湿性の高いEPSを使用しており、ベースコートやフィニッシュも含め下地より外部側の工法全体を通じて水蒸気の排出がスムーズに行われる=凍結融解による外壁劣化が起こりにくく、丈夫で長持ちとなる。
  6. EPSや樹脂モルタル下地を組み込んだ複合仕上工法であるため、RCに直接塗装などを仕上げる場合より、遥かに高い仕上材の耐久性が得られる。工法自体が柔軟でクラックなどが入りにくく、専用仕上げ材は、最高級のオールアクリル樹脂と天然骨材との組み合わせ設計により、促進耐候性試験で5000時間以上と驚異的な数値が得られている。独自の防汚染性や防カビ性能により、簡単なメンテで長期にわたり美装を保つ技術を持っている=長寿命であるため、高いLCCやLCCO2が目指せる。
  7. 表面の専用仕上げ材の種類が多く、多彩な表現力がある=EPSの立体成形による自由な外装デザインとの組み合わせで外壁面への創造的な意匠表現が可能。(テクスチャー5種以上+特注色3百色以上)
  8. 国内でも、しっかりとした資格を有する技能者が必ず携わり施工される仕組みとすることで、施工品質の維持を確保=長い歴史が培った仕組みで信頼を構築。(注*:現在国内全県で、約700名が3日間の研修・試験合格を経て、アウサレーション施工技能者としてID登録)

 なお、上記施工要領説明で理解されるように、同工法に限らず欧米主流の湿式外断熱工法は、基本的に全て現場で施工者の技量に頼る形で実施される工法である。すなわち、適切な設計・施工が製品性能確保の大前提となる。工法の特性を活かした設計仕様で、メーカーのマニュアル通りに現場で施工されていく仕組みがないと、せっかくの長寿命や高品質も確保されない。

 湿式外断熱の市場育成は国のインフラ政策そのものとなってくるため、どの国でも建築法規で最低要求性能を規定している。EIFSに求められる米国基準としての各種性能を図1に示す。同種の工法を導入しようとする国はいずれも、法体制や業界の適切な整備を進めている。国内でも、(社)日本塗装工業会で湿式外断熱基幹技能者育成活動を始めるなど一部業界での動きも始まっているが、今後本格普及に対応して、関連法規の見直しやそれに対応した専門業界の設立が望まれる。


図1.米国での湿式外断熱工法に要求される様々な品質性能


写真2.改修事例;出光興産叶野社宅改修(改修後)


写真3.新築事例;北京市・中国

 コンクリート構造物である「外壁」の外的劣化要因は、風雨・日射・乾燥・外気温変化の中での水分浸透と凍結融解そして地震・風圧など外部応力などによる部材劣化などの複合要因である。

 国内の外壁改修のための建築仕上げ技術は、結果的にコンクリートの熱変化や応力によるひび割れが生じても表面を柔軟に防水保護出来る各種の複層弾性塗料による外壁改修の市場が形成されている。すなわち、剥離・剥落など傷んだ劣化部分の補修技術と、美装・保護のための防水塗装の発達であった。これらの国内の外壁塗装材が目指している性能は、外観美装・保護機能・長期耐用年数・様々な施工環境でも安定した性能確保などである。

 これら改修仕上げ技術は、劣化部分を補修し、防水塗装することによる外壁部の維持(機能レベル低下速度を弱める行為)もしくは補修(陳腐化した機能を竣工時点のレベルまで回復させる行為)の範囲のものであった。前提として、旧建築基準法では、耐火建築物の外部への樹脂材料の使用は、塗膜程度までしか許されてなく、外断熱は防火認定制度による厚い外皮構造の仕様しか認められていなかったこともあった。

 しかし、2002年頃からの法改正による、欧米の湿式外断熱の国内導入の動きは、外壁改修分野へも、グローバリゼーションによる大きな変化をもたらせている。すなわち、リフォーム(維持・補修)から、リノベーション(外断熱改修による新デザイン+パッシブ省エネ機能付加)への変化の動きである。コストをかけ耐震補強された構造躯体は、外断熱改修されることで、付加価値の高い長寿命建物として未来に継承されていく。国内では、法改正により新築でのアウサレーション採用事例が年々増加しているが、改修の伸び率は、新築より多い。現在の外断熱改修事例は地方公共団体の保有する公営住宅や病院・福祉施設等の改修が多い傾向にある。これまでに改修を行った建物を見ると、外断熱改修を行う理由として、長期的外壁補修費対策が多いが、防露や省エネも含まれている。背景に、環境対応型の公共事業指向が感じられる。

 外断熱改修を行った集合住宅では入居者の満足度が高く、団地などで一部が外断熱化されると、他の住棟でも改修を望む声が多いようである。

 特に改修後の各住戸の月間光熱費の低減(半減した(=ファクター2達成)との報告も多い)や、冬季の結露問題解消の実績は、本工法による外断熱改修効果の認知度を、確実に普及させている。


写真4.国内の改修施工状況:施工者への現場研修指導風景

 アウサレーションによる官公庁の改修物件が増加しているなかで、2年前より仕上げ段階で塗装工法利用できる新工法開発の要望があった。要望を出していたのはユーザーである官公庁の営繕関係者や日本塗装工業会の新規事業開発メンバーである。ドライビット社は、それに対応する形で、米国本社の研究開発部門が作業を進めていたが、ようやく開発を完了し、2005年10月に新工法として「アウサレーション・スムース」を発売することになった。

  1. 国内のRC外壁改修仕上技術は劣化部位の補修と複層弾性塗装による防水塗装を中心としたものである。従来から鏝施工仕上げ主体であったアウサレーションであるが、同スムースではベースコート上塗り工程と仕上げ工程をローラーやスプレー仕上げ工法で対応でき、質感としても透湿専用仕上材(フィニッシュ)で吹き付けタイル等と同様のテクスチャーとすることができる。
  2. JIS A6909 複層仕上塗材CEに合格*5した透湿型専用仕上材である。
  3. ローラーもしくはスプレー技術による仕上げとしたことで、規模の大きな物件では施工合理化によるコストダウンが見込める。
  4. 既存のアウサレーション施工に比較して、専用仕上材がより速く乾燥し、工程管理が改善される。
  5. 改修工事では、下記4工法の組み合わせで、合理的な改修計画が対応できる。

1) 外断熱改修(断熱+防水補強+パターン(塗膜保護)+仕上(再塗装))
2) 劣化防止+外観美装(防水補強+パターン(塗膜保護)+仕上(再塗装))
3) −1 外観美装(パターン(塗膜保護)+仕上(再塗装))
3) −2 再塗装(パターン付き既存仕上げ面への再仕上げ)

 スムースは従来の骨材入りフィニッシュによるテクスチャー付けでなく、ベースコート用の樹脂モルタルの粘度を調整して、ベースコート下塗り施工の後に、スプレーもしくはローラーで上塗り施工することで、国内のローラー仕上げ用複層弾性塗材仕上がり感と同じようなテクスチャーを持たせる仕様である。

 テクスチャーが付いたベースコートが乾燥した翌日以降に、フィニッシュとして弾性系のウェザーエラスティック・スムースをローラーもしくはスプレー吹き付けし、施工が完了する。新製品は、従来からの樹脂モルタルや弾性系塗装仕上を組み合わせて、国内改修市場のニーズに合わせた施工方法を提案するもので、製品材料の性能・実績としては従来からのアウサレーションをそのまま継承できる内容である。新工法は、従来の複層弾性塗装による公営住宅と類似の質感を提供できるため、営繕関係者へ余分な意匠変更のご苦労をおかけしなくて済むことも、メリットとなる。

 これまでのアウサレーションの課題であった「鏝のみによる高い施工技能を要する仕上げ」「フィニッシュの乾燥時間の短縮」がかなり解決され、規模の大きな改修工事では、施工合理化によるコストダウンも期待されている。これまで、ASTM規格で、塗材性能を説明していたが、JIS A6909 複層仕上塗材CEに合格することで、スムースはより関係者の理解を得やすくなる。

 今後、この新製品スムースを、これまで塗装改修事業を展開されていた地元施工会社と、長年アウサレーションの施工経験を重ねてきた施工会社が協同で改修対応することで、メリットの多い湿式外断熱の急速な普及に繋がることを期待したい。


写真5:アウサレーション・スムース研修風景

 これまで環境対応と言えばメーカーの自主表示が中心であったが、今後は国際的な環境対応要求基準への適応が求められるようになろう。そしてエネルギーの高騰は、パッシブ理論に叶った正しい断熱方法である湿式外断熱の普及を加速している。

 建物の大規模修繕では、湿式外断熱のRC外壁躯体保護機能により、これまで話題にもならなかった外断熱改修が、重要な検討課題として管理関係者の間で議論されるようになってきた。その過程では湿式外断熱に造詣の深いアドバイザーの存在も重要視されることであろう。

 確かに、これまでの改修工法(補修+防水・塗装)より一時的に工事費がかさむことは事実である。しかし、RC外壁が長寿命化することによる資産価値の向上、光熱費の省エネと室内環境改善による健康居住空間の創出、そして次期改修までの期間延長による補修費低減など、長期的に見た場合、投資価値のある支出と考えることが可能となる。本課題は地域への経済効果も期待されることより、この分野こそ補助や低利融資など政府の後押しに期待したいところである。

(関口高正)

 
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