『建材フォーラム』2007年8月号掲載

第2回「外断熱工法において要求される防・耐火をはじめとした品質保証」
外断熱工法において要求される性能とそれを満たすために必要な項目について、省エネの観点のみならず施工、防・耐火面からも解説を加えながら3回シリーズでお届けする
前回は外断熱工法を採用することによる効果とメリットについて紹介したので、今回は安全と品質について紹介したい。
1 不燃と可燃の断熱材
一般に断熱工法に使用される断熱材には不燃材と可燃材がある。前者にはグラスウールやロックウールがありこれらは無機繊維系断熱材と呼ばれ、主に乾式外断熱工法で使用されている。後者には発泡ポリスチレン(EPS,XPS)や発泡ポリウレタンなどがあり、これらは発泡プラスチック系断熱材と呼ばれ、主に湿式外断熱工法で使用されていている。現在国内外を見渡すと、外断熱市場では発泡プラスチック系断熱材が主力を占め、中でもビーズ法発泡ポリスチレン(EPS)を湿式外断熱工法で使用している例が非常に多い。
不燃繊維系断熱材を用いた乾式外断熱工法は、従来から建築基準法で認められていた、火災には安全な工法であるが、コストがかかることや機能的に劣ることが難点で殆ど普及していない。ここでは、市場にもっとも普及している湿式外断熱工法についてその火災に対する安全性について整理してみる。
2 日本における火災の歴史と法律
外断熱工法の火災性能を論じる前に、日本では火災に対する対策について歴史的な変遷を見てみる。
日本火災学会編の火災便覧などによると、江戸時代には長さ2km近くに及ぶ大火が100回近くも発生したという。大正12年の関東大震災では東京・横浜は地震後の大火により壊滅的な被害を受け、東京大空襲でも日本の建物が対火災能力に弱い所を狙われて大きな被害を被っている。
日本における現行の建築防火法規は昭和23年に「消防法」が制定され現行法の骨格が制定された。その後、「市街地建築物法」を前身とする「建築基準法」が作られ、防火・耐火性能の基準を定め、建築物の防火性能向上が図られている。また、建物そのものの防火性能だけでなく、都市レベルで見た「街区の不燃化」についても規定されている。
3 建築基準法と外断熱工法
1. 平成12年の建築基準法の改正
昭和60年以降平成12年の建築基準法改正まで、外断熱工法は「外壁の外側に断熱層を設け、不燃材料の外装材で断熱層を覆う工法」と定義されていた。必要な防火性能は「周囲の火災による輻射熱、対流熱、飛び火および自らの出火による噴出炎により、外装材や断熱材などが着火し、その火炎が拡大したり、滴炎が飛散するなど周囲への延焼やその危険性を助長したり、壁体などが耐火性能を損ない倒壊などが生じて周囲に損害を与えないこと」であり、さらに、「その火炎が拡大して火気が窓などから建物内に侵入して出火したり、その火炎がさらに上階への延焼の危険性を助長したり、着火拡大して炎や煙、ガスが避難や消防活動に支障を与えたり、火熱により外装材などが剥落、爆裂などを起こして、同じく消防活動に支障を与えないこと」であった。
そのうち、不燃以外の材料を用いた工法も認可する必要性があり、法38条を利用した特例工法については防火性能を確認する試験が実施された。その内容は「耐火試験炉内の屋外側から火熱を加え弱点部となる開口部回りの燃焼性や外装仕上げ材の剥落状況などを観察する」もので、非常に厳しい審査内容であった(参考 建築技術2001年2月号P116〜P119)。
法38条の認定には建設省が指定する試験機関で試験を実施し、その試験成績書に基づいて日本建築センターが実施する評定を行い、合格する必要があった。
このような背景から、高温で加熱され変形しても、脱落、剥落しないように表面仕上げそのものにある程度の強度を持たせる「厚塗り工法」が開発された。塗り代の厚い「厚塗り工法」は表面の防火性能が高い半面、乾燥収縮によるひび割れが目立ったり、乾燥とともに外側に反ったり品質的に安定しない面も持ち合わせていた。これらの外断熱防火認定工法は法38条が建築基準法改正で削除されたことにより2年間の猶予の後平成14年に完全に失効した。
2. 建築基準法改正以後
平成12年の建築基準法改正以後は従前の仕様規定に加え、新たに性能規定の手法でも判断が可能となった。耐火構造の外壁や軒裏に表面材として木材などの可燃性のある材料を貼る場合において、改正前は不燃材料以外の材料を用いた外断熱工法は法38条認定工法以外一切不可であったが、改正後は不燃材料以外を使用したものでも採用が可能と判断され、「日本行政会議2002年の解説」において、「外壁に一定の性能を有する断熱材を施す場合は、耐火構造に必要な性能を損ねない」と記述された。
日本建築行政会議(JCBO:Japan Conference of Building Officials)では、「外壁の性能を損ねない外装材としては、グラスウール、ロックウール等の無機系の断熱材、また、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄材で補強されたコンクリートブロック造、レンガ造もしくは石造については、表3-1に示す有機系の断熱材を用いた外断熱を施すことも可能である。」との見解を示しているが、たとえ下地が耐火構造であっても可燃性の断熱外装材を貼る場合は、「建築基準法で定める防火に関する性能を満足する」ことが証明されていなければならない。
証明方法の一つとして、後で述べる米国ICBO基準による各種燃焼試験を含むその他性能試験を第三者機関で検証する方法があり、第三者機関の判定を日本建築センターが再認証することで性能規定に合格したものと認められている。ドライビット「アウサレーション」はこの方法により国内でも火災安全性が確かめられた第1号の製品である。将来を考えると、国際的に共通性のある明確な評価試験方法及びその合否基準の考え方が確立さえれることが望ましく、中国や中央アジアなど米国の建築物防災基準を自国の基準に利用している事例は多い。
なお、弊社のドライビット「アウサレーション」が担保する火災性能と基準法の条文との関係は表3-2の通りである。
表3-1 断熱材の種類
| 分類 |
種類 |
JIS番号 |
発泡プラスチック系 |
ビーズ法ポリスチレンフォーム |
JIS A 9511 |
押出法ポリスチレンフォーム |
JIS A 9511 |
硬質ウレタンフォーム |
JIS A 9511 |
フェノールフォーム |
JIS A 9511 |
4 ICBO基準とは
断熱材に発泡系プラスチック断熱材を多用してきたアメリカ、カナダ等北米諸国は、1980年代はじめ、外断熱工法を施した外壁の上層階への延焼の危険性を正しく評価するため、世界に先駆けて実践的な方法による外壁の防火性能の研究調査を開始、1980年代後半になって、実大2階建ての試験装置によって高層建築物の外壁の防火性能を評価する「多層階外装防火試験」いわゆる「マルチストーリーテスト」が確立した。
参考までに、米国における防火に関する試験内容を、表4-1、表4-2および図4-1に示す。
表3-2 防火性能に関するドライビット外断熱の対応
| 条文の番号 |
条文の内容 |
対象としている部位 |
処置 |
| 法22条、23条、24条 |
法22条区域内の壁は防火構造とする。同区域外は土塗壁または同等以上の防火性能とする。 |
外装材(外断熱工法) |
防火性能証明:ICBO再証明:上階への延焼防止
UBC17-6 他 |
| 都計法8条5号、9条第19項 |
防火地域・準防火地域の指定 |
外装材(外断熱工法) |
防火性能証明:ICBO再証明:上階への延焼防止
UBC17-6 他 |
| 法62条、63条、64条(準防火) |
延焼の恐れある部分は、外壁・軒裏を防火構造 |
外装材(外断熱工法) |
防火性能証明:ICBO再証明:上階への延焼防止
UBC17-6 他 |
| 法61条、63条、64条、66条(防火) |
外壁・軒裏を防火構造
看板・広告塔など「貼付ける物」の不燃化 |
外装材(外断熱工法) |
防火性能証明:ICBO再証明:上階への延焼防止
UBC17-6 他 |
| 令108条 一 |
耐力壁である外壁は、加熱開始後30分間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。 |
外装材(外断熱工法) |
品質性能試験結果証明 |
| 令108条 二 |
外壁および軒裏にあっては、加熱開始後30分間、裏面温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しない。 |
下地の防火性能 |
品質性能試験結果証明 |
| 令108条の2号一、二、三 |
加熱開始後20分間の間、燃焼しない。防火上有害な変形、溶融、き裂その他の損傷を生じない。避難上有害な煙又はガスを発生しないこと。 |
外装の不燃化 |
品質性能試験結果証明
防火性能証明:ICBO再証明:上階への延焼防止
UBC17-6 他 |
表4-1 ドライビットの防火に対する回答
| 防火性能証明ステップ |
認定番号・認定機関 |
証明される耐火性能 |
| 1. 建築基準法に於ける、耐火認定(2時間)を取得 |
耐火認定(2時間)
FP120BE-0004 |
耐火構造壁にドライビット工法を貼っても2時間耐火は保証される。 |
| 2. ICBOの比較耐火試験の妥当性を国内で証明。 |
品質性能試験報告書
第01A2576号
(財)建材試験センター |
無垢のRC壁120mmと、RC壁120mmにドライビット工法を貼り付けたものとの試験結果を比較。
ドライビットを施した試験結果のほうが、RC壁の温度上昇を抑えるなど、外断熱が、悪影響を及ぼしていないことを実験で証明。→下地防耐火性能の担保 |
| 3. 米国国際建築主事会議(ICBO現在ICC 国際法規評議会に統合)が外断熱に求める基準に合格している工法であることを、Aの試験結果と合わせて日本国内で再証明。 |
ICBOの再証明
第01EG020
(財)建材試験センター |
ICBOは、表4-7に示すように、上階への延焼防止性能に関しても追認されていることから、消防へはその旨を報告することにしている。なお、防火ばかりでなく外断熱工法の品質性能全般に対する性能基準が定められている。
→社会インフラ上支障のない工法であるという証明。(弊社の技術資料参考) |
| 4. 断熱材の厚さによる防火性能の相違。(ICBOの許容最大火災荷重がEPS厚み102mmであることより追加証明が必要。) |
ASTM修正E108 |
断熱材が300mmでも安全性が確保されていることの証明。
→102mm〜300mm厚の断熱材使用に対する追加担保 |
表4-2 ドライビットが合格している防火試験
| 番号 |
通称 |
判定項目 |
ASTM E84 |
トンネル試験 |
火炎伝播、発煙 |
ASTM E119 |
標準耐火試験 |
壁体の耐火等級 |
NFPA 259 |
潜在熱試験 |
発熱量 |
NEPA 268 |
放射熱暴露試験 |
隣棟火災からの着火性状 |
NEPA 285 |
ISMA(中規模多層階防火試験) |
壁体における火炎伝播 |
図4-1 防火に関する試験一覧
 注)上記ASTM E-119にて、外皮の防火性能に関する試験を受検している。
写真4-1 多層階延焼防止の重要性

写真4-1は旧マルチストーリー試験(UBC26-4).1980年に開発されたこの屋外防火試験はコスト面や天候条件で試験日数がかかりすぎることより,1994年頃同様の評価試験を屋内で実施できるISMA試験(UBC17-6)に改良された。このISMAは高さ7.3m、幅4.6m、奥行き4.6mの2階建ての試験用躯体に試験体(ドライビットボード)を貼り付け、1階部分に開口を設ける。室内および窓枠上部をそれぞれガスバーナーにて30分間燃焼加熱し、上層階への延焼について試験を行う。現在はこのISMAで多層階防火試験が行われている。
5 外壁に要求される防火以外の性能
表5-1 ICBOの評価項目
| 性能 |
評価項目 |
ICBO基準 |
国内基準 |
| 防耐火特性 |
耐火性能試験 |
− |
○ |
多層階防火試験 |
○ |
|
発煙防止性能 |
○ |
|
標準耐火試験 |
○ |
|
輻射熱暴露試験 |
○ |
|
| 付着特性 |
下地-断熱材接着強度平面引張り試験 |
○ |
|
| 耐凍害性 |
凍結融解試験 |
○ |
|
| 構造強度 |
正負風力荷重試験 |
○ |
|
| 耐塩害性 |
塩水噴霧試験 |
○ |
|
| 透湿性 |
水蒸気の透過性 |
○ |
|
| 耐候性 |
促進耐候性試験 |
○ |
|
| 耐水性 |
耐水度試験 |
○ |
|
図5-1 ドライビット外断熱工法が実施した試験の種類
米国でビル法規が湿式外断熱に要求している性能要求項目。
(ドライビットの例で米国証明の国内再証明の項目を説明)

ドライビット外断熱工法が、受検し合格した大臣認定の性能評価項目
ドライビット外断熱工法は耐火性能について建築基準法に基づく性能評価を受け大臣認定に合格している。(大臣認定番号 第8072号)
一方、米国ICBOの耐火性能の評価の考え方は、対象湿式工法を躯体に取り付けた状態と、取り付けない状態で比較し、耐火性能が落ちないかどうかを比較するもので、ドライビット外断熱工法はそのどちらにも合格している。
さらに、国内では試験対象とならない左図にある多くの項目についても米国の品質性能試験に合格している。外断熱の外壁は、これらの性能も要求しているからである。 |
ドライビット外断熱工法が受検し合格したICBOの品質性能評価試験の項目(アウサレーションは(財)建材試験センターより2002/1月にICBOの再証明書の発行を受けている。)
証明番号 第01EG020号 |
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耐火認定(2時間)FP120BE−0004 |
証明番号 第01EG020 |
製品が十分な性能を持っていても、外断熱は建物の性能の一部として設計と施工というプロセスを経て実現するものである。次回はそのために必要な施工体制と社会の仕組みについて言及したい。
(関口高正)
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