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 > 技術資料 > 掲載論文湿式外断熱アウサレーションの耐久性と施工事例
09/08/23 更新

月刊『建築士上技術』2008年1月号掲載


1.はじめに

 「外壁」は外的劣化要因である風雨・日射・乾燥などに常に曝される建築要素で、躯体の保護機能と美観を合わせ持つ重要な箇所である。この外壁に断熱性能を持たせた建物を「外断熱建築物」と称している。

 外断熱建築物は、無断熱・内断熱の建物に比べ、省エネや快適な室内温熱環境の確保、躯体コンクリートの中性化進行を遅らせる等の特長があり、居住者がその恩恵を享受するばかりではなく、「地球温暖化防止」など社会的意義も大きい。

 そのようなことから、健全な外断熱工法は新築の建築物ばかりでなく、改修建築物でも躯体の耐久性向上(建築物の長寿命化)・美観回復(向上)・室内環境の大幅な改善が同時に期待でき、資産価値の向上につながる。
外断熱工法は、いくつかの工法に分類される。2000年の建築基準法の改正により、旧来の仕様規定に対し欧米の性能規定が導入され、透湿薄塗型の湿式外断熱工法が、国内でも施工可能となった。欧米では、この湿式外断熱工法が40年近く多くの建築物に採用されてきており、安全で耐久性の高い技術であることがわかる。
基準法の改正内容(性能規定導入)が判明してきた2001年頃より、弊社は米国ドライビット社の協力のもと、法改正に対応した各種証明と関係する行政などとの協議を行い、国内での湿式外断熱工法の市場が拡げることができた。

 この時、特に問題になったのは、法22条・法23条などで規定されている「外壁の不燃性」であった。従前の改正前の基準法では22条指定地域以内では、塗料などを除き、法で規定されている土塗壁同等以上の防火上有効な壁とされており、それ以外は一切使用を認められていなかった。すなわち,ほとんどの建築主事はこの解釈を「下地は要求される防耐火性能を持っており、且つ不燃材料と同等以上の法で規定された材料のみが外装材として使用される」ということを許可の前提と判断していた。しかし、法改正により「性能評価」という手法によっても、不燃と同等の防火性能を確保することが可能となった。すなわち可燃物であるEPS(ビーズ法発泡ポリスチレンボード)を使用したアウサレーションも、米国ICBO−ESという規定に基づく性能を国内で認証する手続きで、基準法が要求する防火性能を持つと判断され、国内での耐火外壁表面等への施工が可能になった。可燃物の断熱材を使用した湿式外断熱工法にとって、「不燃と同等以上」という防火性能の証明が重要なポイントの一つである。

2.湿式外断熱工法の概要

1)アウサレーション工法とは何か?

 湿式外断熱工法(EIFS:Exterior Insulation Finish Systems)の一例として、世界で最大のシェアを占める、米国ドライビット社のアウサレーション工法について簡単に概要を紹介する。(*1:累積実績約約3億m2以上)


写真1.アウサレーション外壁仕様写真

2)工法の概要

 下地は耐水性と防耐火性のある必要強度を持ったコンクリートなどの外壁である。下地に求められる要件は、台風や地震に耐えられる長期的な強度・耐久・防水性を持っており、断熱ボードの平滑な接着が可能なことである。下地に接着する断熱ボードはEPSであり、透湿性や防火性などドライビット社指定仕様のEPS品(以下ドライビットボードと記述する)を使う。下地と断熱ボードの間の接着樹脂モルタルは写真では見えていないが、全面接着で取り付けられる。接着厚みは約2−3mmとなる。接着剤は、ドライビット社製ポリマーとセメントの現場混合による接着混和材であり、ドライビットボード裏面にノッチ付き鏝で均一に塗布して貼り付ける。ボードの厚さは一般的に50〜120mmが多いが、設計事情に応じて20〜300mmまでの範囲で対応できる。接着完了後、そのドライビットボードの表面を約2mm厚の樹脂モルタルとガラス繊維メッシュが一体になった層で覆い(鏝施工)、ベースコートと呼ばれる保護層を構成する。ベースコートが乾燥したら、最後の表面仕上げ工程に入る。透湿性を持つ専用の塗り材(ドライビット・フィニッシュ:ロームアンドハース社のオールアクリル樹脂をベースに骨材などと特殊配合された各種仕上げ材)により、鏝もしくはローラー・スプレー施工にて、装飾的に仕上げる。このメッシュ入りベースコートとフィニッシュコートによりドライビットボードに高耐久性・耐水性・耐衝撃性・防火性・意匠性・防汚性等が付与される。ボードの接着から仕上げまでが総合的に商品設計されたシステム工法による外断熱工法であり、米国EIFS工業会(EIMA)規約に準じてメーカー研修を受けた専門施工者のみによる施工を前提に、全米に普及してきた。

3)湿式外断熱工法の課題

 湿式工法とは、建築用語辞典(日本建築学会編)で「水を加えて練り混ぜた材料を、塗りつけたり吹き付けたりして、乾燥硬化により完成させる工法」と説明されている。アウサレーションを含め全ての湿式外断熱工法は、気温や湿気・降雨・霧・風・日射などの、天候や施工場所の条件によって施工工期やコストが左右されやすい。寒冷期や多湿降雨期での施工においては、未乾燥硬化段階では、通常の外部左官の仕事と同様に、しっかりと養生(採暖)を行わないといけない。厳しい施工条件の場合では降雨や霧・凍結融解などで施工面が品質的に影響を受ける可能性があるため、専門的な施工管理が重要になる工法である。

しかし、一旦接着材やベースコート、そして仕上げ施工層が乾燥し硬化完了すると、オールアクリルのディスパージョンの架橋構造により、驚くべき外皮の耐久性が確保される。

3.湿式外断熱工法の耐久性

1)米国において、湿式外断熱工法に法的に要求される性能

 湿式外断熱工法(EIFS)に米国国際主事会議評価機関(ICBO−ES)が要求する最低限の要求性能をすべて、アウサレーションはカバーしている。防火や耐風圧などアウサレーションの認可に必要となったICBOの再証明書で証明している基本性能は図1の通りである。これらの証明データはサンクビットURL(文末)でダウンロード出来る。

 30年以上の年月となると、外皮には地震、火災、台風、凍害、など多くの劣化要因が関係してくる。


図1.米国での湿式外断熱工法に要求される様々な品質性能

 これらの法規的な要求性能は、社会資産としての建築外皮に最低限要求されるべき性能であり、環境負荷上重要な、長寿命建築としての機能である。

2)防火性能の評価について

 その中で、防火性能について考えてみる。


図2.米国EIFSの防火関係の各種性能評価試験

 アウサレーションは図2のような各種防火試験を米国の第三者機関で受け、法が要求する基準に合格している。それをさらに日本の(財)建材試験センターから、再認証を受けている。


写真2.米国・多層階防火試験でのアウサレーション試験中の状況

 写真2は図2左上の火災時の上階への延焼や避難者への安全性を評価する実大多層階防火試験での、試験中の写真である。米国では、このように窓から吹き出す火炎に、最低30分以上耐えることが法的に要求されている。なお、この火炎は開口部から噴き出している炎であって、断熱材が燃えているのではない。火元を取り去るとこの炎は完全になくなることが、試験記録ビデオ(サンクビットURL(文末)で閲覧可)で確認できる。この他にも輻射熱暴露試験やトンネル試験など、防火関係だけで4種の試験にクリアすることが必要である。これらの証明が国内でも法の要求する「不燃と同等」の根拠になっている。地震国日本にとって、火災は必ず想定すべき災害であるため、国内でも重要な機能の一つになっている。

3)耐久性の評価について

 環境性能評価ツールCASBEEの補助資料によると外壁仕上げ材の補修必要間隔は、石貼(花崗岩)で25年から65年、タイル貼だと40年から60年の耐用年数があると記述されている。現実的にタイル貼のマンション外壁の大規模改修は15年位で、必要なことが多い。 評価のポイントは仕上げられる材料の性能だけではなく、いかに取り付けられているか、その工法自体も重要である。

 実際の性能評価でアウサレーションの耐久性はどの程度に評価されるだろうか?
アウサレーションは38年で3億m2以上の実績があり、上記の通り厳しい各種の耐久性に関する試験に合格している。また、米国では一部の商品で「30年保証」を発行しているなど、30年以上の耐久性能が大きな特徴である。CASBEEより6年先輩であり、米国で使用されている環境負荷評価ツールLEEDでは、アウサレーションは、評価ランク最高の30年以上という評価となっている。

 ところで、外装材の耐久性以上に、構造体つまりコンクリートの耐久性も重要である。アウサレーションは、アンカーなどによる損傷要因が無く、また外部からの熱や雨水の侵入による躯体の劣化を防ぐ機能もある。駆体保護機能は、建物の長期耐久性という観点で大きな要素である。

4.「アウサレーション」の国内外実績

 写真3〜6は海外・国内でのアウサレーションの施工物件例を示す。


写真3.米国・新築:リバーシティ シカゴ イリノイ州、米国


写真4.中国・改修、外断熱改修効果を建設省自ら実施 北京市 中国

写真5.国内新築の写真:栃木県「東急ハーヴェストクラブ那須新築工事」


写真6.国内改修の施工例:北海道「ピンネ農協」

5.まとめ

 外断熱工法は材料と施工法が厳密に組み合わされた総合技術である。仕様をメーカーが規定し、性能を第三者機関が厳密なテストを行って保証したものである。 省エネ法が改正され外断熱の新築や改修が増加しているが、外断熱工法を採用するにあたってはメーカーが証明し、保証している内容を良く比較して、発注者は所定の性能を持つ外断熱工法を選択すべきである。因みに弊社の製品は米国で施工可能な性能を有し、国内でも(財)建材試験センターより再証明を受けていることは前述した通りである。この場合、発注書へは「断熱材EPS○○mm」「(財)建材試験センターのICBO/ES再認証承認・アウサレーション仕様同等以上の性能」と書いていただき、その証明書類を設計図書の添付書類に加えることで、法的に必要な性能を仕様として指定できる。

 設計図書へこのように仕様を明示することにより、耐久性だけでなく現在話題の多い耐火/防火性能への証明となり外断熱工法の「発注者責任」が完成する。

 本湿式外断熱工法(ドライビット社のアウサレーション工法)は上記以外にも下記のメリットがある。

  1. 長寿命でメンテナンス費用が少なく、省エネ効果が大
  2. 外装デザインへ多彩に対応し、自然災害(地震・火災・台風・凍害)に強い
  3. 居室内での外断熱による快適健康環境を実現
  4. 外断熱改修において施工時の騒音・振動や臭いなどが少なく居ながら施工が可能

 原油高騰や環境問題が緊急な国際問題となっている現在、アウサレーションは中国・インドなどアジアやアフリカを含む世界110カ国以上で世界的に普及している。現在の国際社会は、このような高耐久性の外皮断熱化を進める事で、エネルギー依存の少ない・長寿命で廃棄物が環境対応型建築社会に進化しなければならないと思う。

 日本においても高耐久性外断熱建物の普及にあたっては、まず厳しく品質が守られる仕組みをしっかりと構築していくことが必要であろう。

 
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